コーチングの成果は、コーチがいかに相手に効果的な質問を問えるかに懸かっています。
しかし、多くのコーチは質問スキルに不安を抱えています。
新人コーチに至っては、フレームやストラクチャーに沿った型通りの質問しかできないため、相手にインパクトを与えることができません。
効果的な質問とは、前もって用意するものではなく、コーチングの流れの中で自然と生まれてくるものです。
ただこれを新人コーチが簡単にできれば苦労はしません。
そこで今回は、コーチングの「質問スキル」について、基本を分かりやすく解説し、またプロが実践する効果的な質問集をご紹介します。
これからコーチングを学ぶ人はもちろんのこと、既にコーチ歴がある人にとっても非常に役立つ内容になっています。
ぜひ最後まで読んで頂ければ幸いです。
1. コーチングの質問とは?
そもそも、コーチはなぜ質問するのでしょうか?
それは、相手の中にある答えを引き出すためです。
答えとは、相手が理想とする状態を手に入れるためのあらゆる可能性のことです。
例えば、
- 新しい視点を持たせる
- 潜在能力を引き出す
- 選択肢を増やす
- チャンスを広げる
- リソースを見つける
- アイデアを発展させる
- 知識・スキルの棚卸しをする
- 強みの棚卸しをする
- ブレイクスルーさせる
- 問題を明確にする
- 物事を具体的にする
など、コーチングにおける質問とは、相手の中にありながら、本人がまだ気付いていない答えを引き出し、気付かせることです。
2. オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョン
コーチングで使う質問は、大きく分けて2種類の質問法に分類されます。
- オープン・クエスチョン
- クローズド・クエスチョン
一つずつ詳しく説明します。
2-1. オープン・クエスチョン
オープン・クエスチョン(開かれた質問)とは、相手が自由に答えられる質問のことです。
具体的には「いつ?」、「どこで?」、「だれが?」、「なにを?」、「なぜ?」、「どのように?」といった5W1Hの疑問符を使って質問をします。
オープンクエスチョンは、複数の答えがあったり、答えるのに説明が必要であったり、よく考えないと答えを出すことができないので、相手の中にあるさまざまな考えやアイデアを引き出すことができます。
では、実際にオープン・クエスチョン(5W1H)を使った質問例を見てみましょう。
2-1-1. WHEN(いつ?)
時間やタイミングを明確にするときに使います。
例えば、
- 「いつから始めますか?」
- 「いつまでに達成できそうですか?」
2-1-2. WHERE(どこで?)
場所・環境を明確にするときに使います。
例えば、
- 「どこでやりますか?」
- 「どこで手に入れることができそうですか?」
2-1-3.WHO(だれ?)
人物を明確にするときに使います。
例えば、
- 「だれが適任だと思いますか?」
- 「その情報はだれに聞けば分かりますか?」
2-1-4. WHAT(なに?)
物事を明確にするときに使います。
例えば、
- 「問題点は何ですか?」
- 「必要なことは何ですか?」
2-1-5. WHY(なぜ?)
説明や理由を求めるときに使います。
例えば、
- 「なぜ上手くいったと思いますか?」
- 「どうしてそのように思うのですか?」
2-1-6.HOW(どのように?)
手段や方法を明確にするときに使います。
例えば、
- 「どんな方法があると思いますか?」
- 「どのようにすれば次はもっと上手くいくと思いますか?」
オープン・クエスチョンは、相手との関係性を十分に築いていなければ、効果はありません。なぜなら、人は関係性の築けていない相手に自分の気持ちや考えを詳細に話すことに抵抗や負担を感じてしまうからです。相手とまだ距離がある場合には、相手が答えやすい質問からはじめると良いでしょう。
2-2. クローズド・クエスチョン
クローズド・クエスチョン(閉ざされた質問)とはYES|NOで答えられる質問のことです。
相手の意思や事実を確認するのに適しています。
例えば、漠然とした答えをはっきりさせたいときや、迷いや曖昧さを取り除きたいとき、いくつかの選択肢から一つの答えを選ぶ必要があるときなどは、クローズド・クエスチョンは有効です。
では、実際にクローズド・クエスチョンを使った質問例を見てみましょう。
2-2-1. 意思の確認
相手に意思を確認するときに使います。
例えば、
- 「それは本当にやれそうですか?」
- 「次回までにやってきてもらえますか?」
2-2-2. 事実の確認
相手に事実を確認するときに使います。
例えば、
- 「頼んでおいた件はやってくれましたか?」
- 「それは本当にあなたの本音ですか?」
2-2-3. 答えを絞り込む
いくつかの選択肢から答えを選ぶときに使います。
例えば、
- 「その中で一番やりたいことはどれですか?」
- 「AとBを比べて、どちらの方を選択しますか?」
クローズド・クエスチョンは、限られた範囲内での答えを強要してしまう恐れがあります。使い方を誤ると、相手の選択肢を狭めたり、誘導して答えを押し付けてしまう可能性があるので注意しましょう。
3. プロが実践する効果的な質問集
質問の基本をしっかり理解できたところで、ここからは実際のコーチングの現場で使える質問テクニックをご紹介したいと思います。
3-1. 視点を変える質問
相手が行き詰っていたり、思い込みに縛られているような場合には、まったく別の角度から質問を投げかけ、相手に新しい視点を持たせるのが効果的です。
例えば、
- 「あなたの尊敬する○○さんだったら、この状況をどう乗り越えると思いますか?」
- 「相手の立場から今のあなた自身を見たらどう思いますか?」
- 「あなたがライバル会社の社員なら、自分の会社のどこが弱点だと思いますか?」
このように「As if もし~だったら?」を使って質問すると、相手の視点を一瞬で変えることができ、今までにない新しい気付きやアイデアを得るきっかけをつくることができます。
3-2. 未来を予測する質問
人が本当に自ら進んで行動ができるのは、その行動によって得られるメリットが明確にイメージできているときだけです。
それには未来を予測させる質問が有効です。
例えば、
- 「これをやり遂げたら何を手に入れることができますか?」
- 「5年後、どんな自分になっていたいですか?」
- 「3年後の自分から今の自分にアドバイスするとしたら?」
未来を予測させる質問は、相手の理想の状態を明確にし、そのための答えを発見させ、行動を導き出すことができる非常に効果的な質問です。
3-3. 選択肢を増やす質問
オープン・クエスチョンを使っても、相手から限られた答えしか返ってこないときがあります。
このような場合は、相手にもっと選択肢があるということを気付かせる必要があります。
例えば、
- 「他にはどんな方法がありますか?」
- 「答えを3つ挙げるとしたら?」
- 「何の制限もなく自由にできるとしたら、どんな選択肢がありますか?」
色んな選択肢がある中から最終的に自分自身が選んだ答えだからこそ、納得して行動を起こし、その結果も責任を持って受け止めることができます。
3-4. 物事を明確にする質問
相手が最初に出す考えや答えは、漠然とした抽象的なものです。
人が実際に行動を起こすには、見て聞こえて触れるくらい具体的にイメージできる答えにする必要があります。
例えば、
- 「~とは具体的にいうと?」
- 「~について、もう少し詳しく聞かせてくれませんか?」
- 「理想が100点とするなら、今は何点ですか?」
人間の脳は曖昧さを嫌います。
正確な情報を与えなければ、脳は正しい判断を下すことができません。
コーチは相手の答えが具体的になるまで質問によって掘り下げていきます。
3-5. リソースを見つける質問
相手の中にはたくさんのリソース(経験・知識、スキル、サポーターなど)があります。
コーチは相手の目標達成や問題解決に使えそうなリソースを相手の中から引き出していきます。
例えば、
- 「これまでも同じような状況はあったと思いますが、そのときはどのようにして乗り越えたのですか?」
- 「前回の成功体験|失敗体験で活かせるものはありますか?」
- 「このことについて誰か相談できる人はいますか?」
人がこれまで経験してきた出来事は、捉え方次第でどんなこともリソースにすることができます。
自分の中にたくさんの強みがあるということを気付かせることは、相手に自信を与えます。
3-6. 本気を引き出す質問
成果を生み出すために何をするべきかを頭の中で整理できても、それを実際に行動に移すには迷いや葛藤が生まれるものです。
このようなときは、敢えてストレートな質問で相手の本気を引き出すことが効果的です。
例えば、
- 「今本気にならなくて、いつ本気になるのですか?」
- 「今やらないことであなたが失ってしまうことは何ですか?」
- 「目標を達成するためにあなたは何を犠牲にできますか?」
コーチはときに刺激的な質問によって相手を奮い立たせることも必要です。
但し、そこには相手に対する揺るぎない信頼と期待を込めなくてはいけません。
3-7. ブレイクスルーさせる質問
人が困難に立ち向かうとき、真っ先に頭に浮かぶものは大切な人の存在です。
その人にとっての心の支えがブレイクスルーを起こす原動力になります。
例えば、
- 「あなたは誰のことを思い浮かべると勇気が湧いてきますか?」
- 「これを乗り越えることができれば、誰と喜びを分かち合いたいですか?」
- 「ライバルが今のあなたを見たらどう思うでしょう?」
家族や恋人、仲間、尊敬する人、ペット、ライバルに至るまで、その人にとってのパワーの源となる存在は、コーチの下手な勇気付けよりも遥かに影響力があります。
まとめ
さて、いかがだったでしょうか?
今回ご紹介した質問集は、あくまでもデモンストレーションです。
覚えておいて損はありませんが、参考程度に留めておいて下さい。
なぜなら、用意されたマニュアル通りの質問はコーチングでは通用しないからです。
コーチングはライブです。
その瞬間にしか生まれない生きた質問こそが、相手にとって効果のある質問です。
今回の記事があなたのお役に立てることを願っております。
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